拍手レス＆呟き

W（旧）さんがGW中に書いてくれた小話をアップするのを忘れてましたテへ☆
三式の漫画の後日談のようなもの？ユミユミがあんまり出てこなかったので補完だそうです。なので雑記アップ。
特に本のネタバレとかはないので心配ご無用でっす。

桜の話

満開の桜だった。

弓神は落ちてくる薄い花びらを眺めていた。
弓神は桜が嫌いではない。
暗闇にぼうっと浮かび上がる桜は、月明かりに照らされてはらはらと花びらを散らせる。
無理矢理に散らす風もなく、ただ静かに花びらを落とす様を弓神は延々と見続けていた。
音もなく散る花弁は黒い地面の上に白々とした模様を描き出す。

そのうちこくり、こくりと弓神の頭が落ち始めた。
（眠い……）
弓神は木の下に広げた敷布に座ってあくびをしたが、眠気を追い払うことは出来なかった。
開花から数日、飽かずに眺めていたのだ。
睡魔も訪れようというものである。
少しだけ休むつもりで弓神は仰向けに寝転んでしばらく上を眺めていたが、いつしか本当に寝入ってしまった。

＊＊＊＊＊

弓神が目を覚ますと満開の桜の上にはまだ三日月がかかっていた。
大して時間がたっていないらしいことに弓神がほっとして、気がついた。

右手が温かい。

硬くて冷たい地面の上にそのまま寝ていたはずなのに、右手だけでなく、体の右側全体が妙にふわりと温かい。
寝ぼけた頭で手を動かすと、ふかふかとした。
そのままぼんやりと、ふかふかと撫で続けて弓神は、はた、と手を止める。
弓神の手の下で規則的に上下する毛皮の主は寝ているようだった。
（……って、毛皮？）
そっと頭を動かすとぱらぱらと体にかかった花びらが落ちた。弓神は目を見開く。
ふさふさの真っ白な尻尾と投げ出された後ろ足が目に飛び込んでくる。
「慈母……ッ」
弓神は慌てて口を手で覆った。
弓神の隣に寄り添うようにアマテラスが眠っていた。

（ど、どおりで温かいと思った……）
弓神がこっそりと手足をどかそうとしたとき、ふしゅん、とアマテラスがくしゃみをした。
弓神はひやっと息を詰めたが、アマテラスがもぞりと身じろぎして、また深い寝息を立て始めるのに、肩から力を抜いた。
（本当に……何で……？）

完全に目は覚めてしまったが、弓神はまたおそるおそる身を倒した。アマテラスの毛皮に触れた手足はそのままで。

一度夜空を見上げると、また目を閉じた。
（慈母が寒そうだから一緒に寝てあげるんだからねッ）
そして「お休みなさい」と小さく呟いた。