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No.142 壁神&爆神 NAME : 秋飛 / TIME : 2009/03/07 (Sat) 12:53
BROWSER : Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; GTB5; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727; InfoPath.1; .NET CLR 3.0.4506.2152; .NET CLR 3.5.30729)

「あー、ぅー」


何やら背後から小さな声がして、壁神は唐突に振り返る。
声のする方へそのまま目線を下に下げていけば、一人の赤子が道を這っていた。


変わったおむつに、導火線のように縛られた髪の毛。
そのころころと丸いシルエットは、一つの小玉の花火玉のようで。
見覚えのあるその赤子は、壁神に気付いて手を伸ばしていた。

「あれ?ウリちゃん……どうしたの?ひとりなの?」
「ぁぷ、だぁ!」

壁神は走り寄って赤子をそのまましっかり抱き上げると、危なげにあやしながら辺りを見回す。

親である爆神の姿もなければ、何時も一緒である他のウリ達も見当たらない。
そんな様子に壁神は目を見開いて驚いた。

「大変!あなただけ迷子になったの?」
「ぅー、きゃー」
「えと、えと…!とにかく爆おじちゃんを探さなきゃ……きっと心配してる……」

我が子を何より大切にしている爆神の事だ。
今頃血相を変えて辺りを探し回っているに違いない。

壁神は慌てながらキョロキョロと再び辺りを見回しながら考えた。


今日は特に爆神に用は無かったはずなので、他の筆神が預かっている可能性は無い。
なら、爆神と一緒に散歩にでも来たのだろうか。
それなら赤子が這ってこられる距離だ。近くに居るのならそう遠くはない。


そう思い、意識を集中させて耳を澄ませてみる。


すると遠くの方から、必死にウリの名を呼ぶ爆神の声が聞こえた。
どうやら逆方向を探しているようだ。


「爆おじちゃーーん!爆おじちゃぁーーーん!!」

赤子を抱きつつ声の方に走りながら、壁神は精一杯に声を出して爆神の名を呼んだ。

「爆おじちゃん!!ウリちゃんはここよーー!!」


大人でも、赤子を抱きながら走るのはとてもキツい。
それでも壁神は我が子の名を必死に呼ぶ爆神の為に懸命に走った。


「ウリーー!!」
「爆おじちゃん!ウリちゃんここー!!」
「壁神!!ウリ!!!」

その声を聞き、壁神の姿を見つけた途端に爆神は顔を真っ赤にして走ってきた。
息荒く、顔に大粒の汗が滲んでいる。

「ウリ!ああ、よかった…!!」

そして我が子の顔を見て、ホッとしたように息を吐く。
この状況の中、ぴすぴすと眠る三人の赤子を抱えながら爆神はようやく安堵の笑みを浮かべた。
そして、安心感と疲労感でそのまま二人して座り込んだ。

「ところで、どうしてお嬢ちゃんがウリを?」
「あの、あのねっ、ウリちゃん、あっちで一人で居たのを見つけたの」

欠伸をする赤子を手渡されながら爆神がふと問えば、壁神がまだ息を弾ませながら言った。

「あぁ、そうなのか…最近、目を離すとすぐに何処かへ冒険を始めてしまってな……お嬢ちゃん、本当に助かった。ありがとう」

赤子達を脚に乗せ、爆神はそう言って壁神の頭を大きな手で優しく撫でる。

と、ふと何かを思い出したようにその手を引っ込めてしまった。

「………あぁ、いかん。またやってしまったな…」
「?」
「あぁ、頭を撫でる事、だよ。お嬢ちゃんも、もう“おねえさん”だしな……」
「どうして、頭を撫でちゃいけないの?」
「ははは。実はこの前、同じ事をして弓神に叱られてな。“子供扱いするな”と言われてしまった」

どうやら弓神にも同じ事をしてしまったらしい。
弓神が手を払いのけるその光景が目に浮かぶ。

「どうやら、いつの間にか癖になってしまったようだ…」


そう。
爆神の“コレ”は、所謂“癖”なのだ。

彼は子供を褒めたり慰めたりする時、誰に対してもついつい頭を撫でてしまう。

それは彼に育てて貰った筆神達は勿論、花神達や弓神もその例外ではない。
どうやら聞くところによれば、それが彼なりの精一杯の表現方法らしい。

『…ってな事で、爆のおやっさんにそんな事久しぶりにされて、俺も懐かしいやら恥ずかしいやらでよォ…』
『だが恐らく子供扱いではなく、それが爆神の知りうる限りの“育て方”や“接し方”なのだろう』
『育て方、ねェ………。ま、世話してたのが蘇じいじゃ、それしか知らないってのも頷けらァなァ。あの人元々が不器用だしなァ』
『俺達も原因の一端なんだろうがな……今思えば、爆神には随分苦労を掛けた……』
『あー、風姐ェ達ともまた違った意味でな………やんちゃしてたなァ…あの頃…』

随分前に撃神と壁神の元に燃神が訪ねてきた際、二人がそんな話をしていたのを壁神はふと思い出した。

彼は元々真っ直ぐな気質の持ち主で何事にも愚直だが、反面子育てや子供の接しかたなどに対してはいまいち自信が持てない。
だから、今だどうしたら良いのかと迷う事も多く、結果不器用になりがちなのだ。


蘇神(と断神)に育てられ、


親離れは突然やってきて、


次は次世代の子の子守を唐突に任され、


男やもめとして自分の子供も育てていて。

彼にしてみたら全てが始めてで、思い出したりするには記憶が余りに少なく、学ぶには手本などが余りになさすぎていて。


必死に手探りで全てを行っていた不器用な男の、それが唯一学んだ方法。


勿論、そんな意味は壁神にはまだ分からない。
彼女から見れば、爆神は”大人”であり”父親”であり、それ以上でもそれ以下でもないのだから。


ただ、ひとつだけ思う。


「ぁの、あの、ね……」
「ん?」
 「わたしね、爆おじちゃんに撫でられるの好きよ」


そう言われた瞬間、爆神は驚いたように目を見開いた。
だが、壁神は気付く様子もなく、懸命に言葉を紡いだ。


「にいにより手がおっきくて、あったかくてね。それに、とっても優しいから」


愛情を持って子を育てている人の手は、いつでも優しい。
壁神はそれを知っている。


「だから、弓ちゃんも、みんなも、きっと嫌いなんかじゃないと思う。爆おじちゃんの手は素敵だよ」

爆神の手は、その懐のように大きくて。
とても、とても温かくて。


そして

不器用なりに、精一杯の愛情と心の篭った、優しさを含んだ手だと。

「…………ありがとう」


そう言いながら


爆神は


とても

とても優しい顔をして。

もう一度、ゆっくりと壁神の頭を撫でた。


――――
またまたお邪魔しました、秋飛です。今回で3度目の投稿をしてしまいました。

今回はパパ爆さんが書きたくてうずうずして書いてしまいました。
こちらの優しそうなパパの爆神を見ていたらたまりません。赤ちゃんが可愛さを倍増させている感じでまた…!
爆神父さんをあいしています。(爆)

そして接点があまりなさそうな壁神をあえてチョイスしました…。
壁神は無条件で良い所を見つける癒し系の優しい子だと思います。
不器用モノだとか癖だとか呼び方だとかまたも捏造してしまいまして申し訳ありません;
それではお邪魔いたしました。


NAME : 田宮@管理人   Firefox 3.0.7 / WinNT
TIME : 2009/03/14 (Sat) 17:43
またまた投稿ありがとうございます!

なんて、なんてパパ!
不器用なりに頑張ってる姿が本当に健気(?)で、
きっと蘇神も草葉の蔭で泣いていることでしょう…!(※死んでない)
頭をなでる癖、すごく…いいと思います…(ずきゅーん)
他に方法を知らないってことはつまり蘇神がそればっかりだったってことで
そこらへんの不器用さも蘇神譲りなんでしょうね。
でもきっと、そうされたときの嬉しさを忘れていないからこそ
育てる側にまわってから癖になるほどに養い子たちを同じように撫でてきたんだと思うと
なんかこう、暖かいもので胸がいっぱいになります。
壁神は直接爆神に育てられたわけではなくとも、
育て親たちの繋がりを確実に受け継いでいるわけで、
これから先、今度は壁神や他の若い子たちが同じように与える側になる未来を感じますね。

なんか最後は読書感想文みたいになりましたが(笑)
ほんとうに素敵なお話ありがとうございました!

 

No.141 咲 蓮 蔦 燃 凍 (風) NAME : sakura / TIME : 2009/02/26 (Thu) 23:37
BROWSER : Mozilla/5.0 (Macintosh; U; PPC Mac OS X 10.4; ja-JP-mac; rv:1.9.0.6) Gecko/2009011912 Firefox/3.0.6

サァァァァ・・・・


蔦「雨が続くねぇ、咲兄」
咲「しょうがないさ、濡姉の仕事だから」
蓮「でもこれだけ雨が続くとさぁ、外に行っていたず・・・・遊べないよ」
咲「今、悪戯って言おうとしなかったかい?」
蓮「き、聞き間違いでしょ!」
咲「・・・・(図星だよね)」
蔦「・・・・ッくし!」
咲「少し、肌寒くなってきたね。温かい飲み物でも飲むかい?」
蔦・蓮「「緑茶で結構です」」
咲が進める飲み物の名前を出さないときは、たいてい実験で作ったものなのだ。
それをしっかりわかっている二人は、飲み物の名前を出すのである。
過去に何があったかは、三人しか知らない。
咲「わかった、緑茶だね」
蔦(ねぇ、咲兄がすこし残念そうなのって、気のせいかな)
蓮(俺も残念そうに見える)
コポコポ、と咲が緑茶を入れる音が聞こえてきた。
咲を怒らせたらどうなるか、蓮と蔦は嫌というほど実感しているのだ。
いつ機嫌を悪くするか、と思うと冷や汗が流れる。

見た目だけは平和な三人である。

雨は止まずに振り続ける。

咲「少し、風が出てきたね。そろそろ春雷がくるかな」
ぽつり、と咲がつぶやいた。

ところ変わって

「くぁ〜ぁ・・・」
今日何度目になるかわからないあくびをしつつ、寝床から燃神が起き上がった。
外には相変わらず雨が降り、草花たちを濡らしていた。
「今年もそろそろこの場を引き払わなきゃなァ」
燃神は冬は山の上の小屋(弓神曰く鳥小屋)でたいてい寝て過ごす。
ついこの間までは花神や弓神・壁神たちが居候していたのだが、
「そろそろ暖かくなるから」
と、自分たちの寝床へ帰っていったのだ。
花神たちがいなくなってしまうと、小屋は不思議なくらい静かになった。
少し、さびしい気もする・・・・のだが。
(居たらいたでロクなことがねェんだがなァ)
軽くため息をついた。と、


トントン


と些か(いささか)ためらいがちに聞こえる扉をたたく音がした。
「誰だい?」
と問いつつもすでに扉を開けてしまっているのだが。
扉の向こうには、軽くご無沙汰な人物が居た。
「久しぶりだね、燃さん」
「凍兄じゃねェか。どうしたんだい?」
「いや・・・近くを通ったものだから、少し寄ってみたんだ」
「そうかィ。・・・あがってくかァ?そのまんまじゃァ雨で周りが凍っちまう」
「あぁ、そうさせてもらうよ」


「なんか飲むか?」
「・・・じゃ、お茶をもらってもいいかな」
「はいよ」
「・・・・はやいね」
「凍兄の言うことなんざ、大方予想はついてらァ」
「・・・(じゃ、聞く必要ないんじゃないかな)」
「ん、なんかいったかィ」
「いや、なにも」
しばらく沈黙が続いていたが、ふと燃神がぽつっとつぶやいた。
「・・・そういやァ、そろそろ春雷の季節だなァ」
「・・・そういえば、そうだね」
「いよいよ春ってことかィ。凍兄もご苦労さんだったなァ」
「はは、ありがとう。燃さんはこれからだね」
「まァな。筆神たちもいよいよ動き出すなァ」
「へ?」

「ん?だってよォ、まず風姐が春一番で、次に濡さんが雨降らせるだろ?で、撃兄が春雷だろ?
 そうしたら花神たちが動けるようになって、俺も動けるようになる。
 そうしたら蘇じいらが寝床からでてきて、花神たちが花を咲かせる・・・筆神の目覚めみてぇなもんなんだろうなァ」

指を折りながら、燃神が数えた。
すると、凍神がいささか落ち込みながら、
「・・・俺はお役ごめんだけどね」
「ん?凍兄も、夏に一仕事あるじゃねぇか」
「へ?」
「涼しい地方を作るのは、風姐と凍兄だろ?」
「あ、そっか」
自分の仕事だろ、と燃神が笑った。なんとも器用に、キセルをくわえたままで。
つられて凍神もわらう。
ほのぼのとした空気。こんな空気が一年中続いてりゃァ、文句ねぇんだがな、とひそかに燃神は思った。

・・・特に、目の前の凍神は。凍神が放心状態になると、無意識のうちに背の冬の笛を吹きだす。
そうすれば、夏だろうがなんだろうが、一気に冬になってしまうのだ。
その原因は・・・・・・今の雨の操り主が主だ。


今年はどんな四季になることやら、と軽く笑った。

その後。

春雷が遠ざかり、一気に暖かくなった。
燃神の言うとおり、花神たちが元気に外を走り回り、燃神が出歩くようになった。
断神が寝床からでてきて、「腹が減ったのである」と言う。
花神の力で、花が咲き始める。優しい春の風が、凍神の頬をなでた。
あまりにも暖かい春の日差しに、眠気が襲ってくる。
しかも、自分が座っているのは神州平原の柔らかな新芽の芝生だ。
(少しくらい、眠ってもいいかな)
そんなことを思いながら、ごろりと横になる。
たちまち睡魔に追い討ちをかけられ、凍神は眠ってしまった。


「・・・・あら」
濡神は近くを散歩していたのだが、たまたま眠っている凍神を見つけた。
冷気は抑えてあるため、近くに濡神が寄っても凍りつかなかった。
なんだかほほえましくなって、頬がほころぶ。
・・・影でひそかに燃神と風神が熱風を送っているのだが。
そうっと隣に座る。深く眠っているのだろうか、凍神が起きる気配はない。
綺麗に整った顔立ちに、色白な肌。その肌に走る紅い隈取が綺麗だ、と思った。
頬にそっと触れてみた。やはり凍神はおきない。
・・・もっとも、ここでおきられたらたまったもんじゃないのだが。
「・・・冬の間、お疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね」
優しくそう声をかけると、頬から手を離し、すい、と神州平原に目をやった。
中心に賽の芽が咲き誇り、周りに座る人々。鳥が空を飛び、小動物たちが元気に動き回っていた。

皆、春を楽しむかのように。


「・・・・おやすみなさい、凍神さん」
そういうと、静かに立ち上がり、その場を去っていった。

数刻後、凍神が目を覚ます。すると、そばが少し濡れていた。
「・・・・もしかして・・・?」
(濡さん?)
そう考えると、自然に頬が紅潮した。頭を(かぶりを)振って目を覚まし、
凍神もその場から去っていった。


春は、目覚めの季節。 筆神の、目覚めの季節でもあるのだ。


影にて

「きゃ〜っ、濡ちゃんだいた〜んっ!」
「・・・凍兄に教えたいもんだぜぇ」
「いっちゃだめよ、燃ちゃん」
「わーってらい」
「せっかくのおもちゃなんだから!」
(・・・・凍兄、可哀相だなァ・・・)


はい、お久しぶりです。
春を題材に書いたら、なんだか変な方向へ展開してしまいました;
凍兄にいい思いをさせてあげようじゃないか!と思い立ち、
最後に凍兄×濡姉を書いてみました。影の応援者は必須です。(おい)
呼び方・その他注意点のようなものがあったらご指摘お願いします。


NAME : こも@管理人   Firefox 3.0.6 / MacOSX
TIME : 2009/02/26 (Thu) 23:56
投稿ありがとうございます。

春の近づいたこの時期にぴったりなお話ですね〜。
筆神たちがそれぞれ神様としてきちんとお役目を果たしている、その辺をしっかり考えて下さって嬉しいですv
しかもなんだか凍神が幸せな…! 今年が丑年だからでしょうか(笑)
優しい、楽しいお話をありがとうございました!

呼称についてですが、細かいことを言えば
花神の「神」を略すのは「〜ちゃん」「〜兄」と同じく呼称のようなものなので
地の文では略さないほうがよろしいかと思います。
でも楽しんで書いて頂けるならあまり細かいところは気にしなくて大丈夫ですよー(^^)

あと、せっかくサイトリンク貼って頂きましたが、
少々不都合がありましたのでこちらで削除させて頂きました。
何かご質問あるようでしたらメールにてお問い合わせ下さい。

 

No.139 撃神&風神&燃神(&幽神?) NAME : 秋飛 / TIME : 2008/12/01 (Mon) 01:30
BROWSER : Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 5.1; .NET CLR 1.1.4322; .NET CLR 2.0.50727)

キリリリ
パンッ


張り詰めた弧が元の場所に戻る乾いた音が鳴り、空気を切る音が聞こえる。
稲妻型の矢が的へと届く瞬間、雷光と雷鳴が轟いた。


「…頑張るわねぇ……」

それを遠巻きに見るは、風神。
その隣ではこの轟音にも関わらず、御猪口を片手に幽神が筆神の力の一端である酒入りの瓢箪を枕に眠っていた。


撃神は的を見つめ、淡々と次の矢を取り、一呼吸置いて構える。
ぴぃん、と張り詰めた空気が、微量ながら此処まで漂ってくるようだ。
雷のような金色の光を持った瞳が、弓矢の前に的を射抜く感覚。
限界まで引かれた弧、ピタリと止まっている切先。
射った矢は、タァン、と、的を打ち抜いてゆく。


幼い頃、慈母の御許で己の力を自覚したその時から。
与えられた力を暴発させぬようにと、彼は自主鍛錬を欠かさない。

強さを得る為ではなく、強い力を御する為に。


「昔から努力の子だものね〜…」

しみじみとそう呟いた風神の背後から、別の呟きが聞こえた。

「…相変わらず凄ぇなぁ、撃兄ぃの鍛錬は」
「あら、燃ちゃん」
「よう、風姐」

燃神は軽く挨拶をすると、再び撃神の方に視線を向けた。
相変わらず、雷の鳴る音は途絶えない。

「…そういや撃兄ィの鍛錬を発見したの、結構最近の話なんだよなァ…」
「当たり前よ。最初はこんなに近付いて、安心しながら見てられなかったもの」
「へぇ。風姐ェ、知ってたのかぃ?」
「まぁね。フラ〜っと消えちゃうから心配してみれば、随分前からこうしてたみたい」

そう言って当時を思い出す。

“それ”を見付けた当初は、弓の腕もまだ中の上。
弓を射った瞬間に放出される、雷の力を上手く制御出来ないようで、あらぬ所に枝分かれする稲妻に眉を顰めていた。
それでも息を整えながら、必死に的へ向かう撃神の姿を見て、風神はそっとその場を離れた。


あの子のことだ、要らぬ心配をかけさせまいとずっと秘密裏に特訓を重ねていたのだろう。
だから、口は出さない方が良い。

それにこればかりは仕方がない。
筆神の力は個々の物。
己の力を制御できるのは、己だけなのだから。


「…アタシ達の力は、下手をすると周りに被害を出しちゃうから。特に撃ちゃんの“力”は」

しかも撃神のそれは、弓という“武器”を化身とした雷。
それが武器である以上、無闇に他者を傷付けてしまいかねない。
だから、それを扱う者は鍛錬を欠かせてはいけないのだ。

己の力量を知るまで。


「それに、ね…」

「雷は“報せ”だから」
「“報せ”?」
「そう。雷は、“神鳴り”。神が為せる大いなる技よ」


雷は告げる。


雨の来訪を。

梅雨の終わりを。

稲の開花を。


まるで、何かを促すように。

遠く、遠く。


「遠く、輝き、轟いて。報せるの。色んなことを」
「…成る程ねぇ」


如何なる時でも、轟けるようにと。

雷を、
神鳴り、を。

「ところで燃ちゃん、どうして此処に来たの?」
「ああ、そうそうそれだ。風姐ェ、凍兄ィ何処に居るか知らねぇかぃ?」
「凍ちゃん?さぁ…知らないけど?用事?」
「用事っつか、約束っつか。まぁ、そんなトコさね。全く、何処ほっつき歩いてんだか…」
「分かったわ、一緒に探してあげる。これ以上撃ちゃんの邪魔しちゃ悪いしね」
「有り難ぇ」

風神は立ち上がり、パンパンと土を払う。
そして、傍らで眠っている幽神をゆさゆさと揺さぶり起こした。

「ほら幽ちゃん、起きて起きて!もう行くわよ」
「へぁ〜?」
「風姐ェ、先行くぜ〜?」
「ちょっと待ちなさい燃ちゃん!んもう!」

寝ぼける幽神を傍目に、風神はブワリと風を巻き上げる。


風の力で身体を宙に浮かせながら今一度振り向けば、
的の中央に吸い込まれる矢と、稲妻の落ちる甲高い音が聞こえた。

――――
お久しぶりにお邪魔します、秋飛です。お恥ずかしながら2度目の投稿です。
前回の撃神の稽古風景がかっこいい予感、というのをずっと想像しておりまして。
かなり経ちましたが、その辺を今更ながら自己消化してみました。なんか、捏造設定が多くて申し訳ありません;ちなみに、撃神は風神達に一応気付いています。
それより撃神が一言も言葉を発していないという。しゅ、主役…!?
それでは、お邪魔致しました。


NAME : 田宮@管理人   Firefox 3.0.4 / MacOSX
TIME : 2008/12/14 (Sun) 14:14
レス遅くなりましてすみませんっ!
改めまして投稿ありがとうございますー!

うおおおおお予想に違わずかっこいい、かっこいいです撃神の稽古風景!
黙々と鍛錬を積むストイックさはんぱないです…vvv
筆神としてのお役目、素敵にしっかり考えて頂けて有り難いです。
そうですよね、雷の語源は神鳴りですもんね。そこテストに出ますよね(※出ません)
適度な距離を置いてきちんと見守ってる風&幽(見守れてるかな…?)もちゃんと保護者してて、
やはり先達なのだなーと。例えトラウマ植え付けようとも。
主役について周囲が語ってる形式大好きなので、撃神にセリフがなかろうと無問題ですともー!

本当に素敵なお話ありがとうございました!
またいつでも遊んでやって下さいv

 

No.138 おなご爆神 NAME : カイトリ / TIME : 2008/11/25 (Tue) 02:05
BROWSER : Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)

IMG_000138.jpg ( 90 KB ) by Upload お言葉に甘えてまた来ました(笑)カイトリです。

おなご爆神はぶいぶいいわしてたお姉さんなのであまり甘い感じにならないように気をつけました。
そうしたら青系ばかり使っていたので調整したんですが…デジタル絵はこういうとき便利です(苦笑)
おなご爆神の子供達がしがみついてても普通に歩けるところは実にときめきますね…!

ネタがストライクだと言って頂いたので調子に乗っておなご漫画にしようと思ったんですが
一枚ではまとまらなかったのでやめました。
またこそこそリベンジしようと思いますので出張期間延長をお願いします(笑)

おなご部屋の「イラスト」と「もらいもの小話」との場所は増やすためにできたんだと信じてます(笑)

では、お邪魔しました!


NAME : 田宮@管理人   Firefox 3.0.4 / MacOSX
TIME : 2008/12/14 (Sun) 13:42
レス遅くなりましてすみませんー!
投稿ありがとうございます!

わーいカイトリさんのおなご爆!凛々しくてかっこかわいいです!!
下の方では子供たちがまとわりついてますかね(笑)
爆神は猪だし爆発だしで力強いのがときめきます。

カイトリさんのネタほんと大好きなので、もっご自由に遊んでやって下さい★
リベンジお待ちしておりますv
私もがんばって描きます!

 

No.137 凍神と濡神 NAME : 大矢 / TIME : 2008/11/24 (Mon) 12:14
BROWSER : Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; Media Center PC 5.0; .NET CLR 3.0.04506; Tablet PC 2.0)

IMG_000137.jpg ( 51 KB ) by Upload 初めまして。大矢と申します。
以前からこちらに通わせてもらって田宮様の筆神達を描いてみたいなぁと思い、今回思い切って投稿させてもらいました。
凍神と濡神です。本来なら近づくことが出来ないはずだけど、まぁ何かしらの奇跡が起きたということで(笑)このあと幸玉を放出してる凍神にきっと何かがふりかかるのでしょうけど^^
先日、筆ごのみ四式など3冊ぐらい購入させてもらいましたが「曖乎として慈雨の如し」に泣いてしまいました。切なかったですけど、よかったです。何よりチビヒミが可愛いです(ハァハァ← おじと姪の設定は萌えますねw
筆ごのみでは凍神の受難体質がよーく分かったような気がします(笑)

また機会があれば描かせてもらいたいです。では、失礼します。


NAME : 田宮@管理人   Firefox 3.0.4 / MacOSX
TIME : 2008/12/14 (Sun) 12:59
レス遅くなりましてすみません;
改めまして投稿ありがとうございます!

しかしなんという奇跡…!
ほのぼの幸せな雰囲気の裏で凍神ちょうがんばってますね!後が怖い(笑)
濡神の優しげな表情がとてもかわいいですv
素敵なイラストありがとうございました!

本の感想もありがとうございますv
親子ほど頼り頼られる関係に甘んじられない、
でもお互いがお互いを大事に想ってる感じで
おじと姪な関係の宝帝&ヒミコ本当に萌えます。賛同して頂けて嬉しいです!
筆ごのみは凍神ひどかったですね(笑)

 

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