猫鳴の塔は慈母の嘆きの塔なのです。
ここはさみしいところです。
慈母がお隠れになって、あたしは気づいたらここにいました。
雲を突き抜ける高い高い塔のてっぺんです。
手を伸ばせば天に届くような。
でも背伸びをしたって決して天には届きません。にいにの肩に上っても無理でしょう。
ぶ厚い雲と風の音が渦巻いて、ここに慈母の御恵みは届きません。
だけどここは一番天に近いところです。
慈母の嘆きがかすかにきこえるところです。
あたしは必死で風の音に紛れる慈母の嘆きに耳を傾けます。
ここには野生の猫しか住めないのです。猫は寂しくても生きていけますから。
それでもあたしはとっても寂しくて寂しくて、かすかな慈母の声を探し続けるのです。